大阪メトロ御堂筋線に乗って、淀屋橋駅で下車した。新大阪駅行きの北大阪急行の車両だった。車内アナウンスが流れた。「痴漢は犯罪です」と自動音声で言っている。国語的におかしい表現だ。頭の中がザワザワし出した。
↑新車だとわかる
↑防犯カメラが睨んでいる
↑東洋一といわれる広告板(大阪メトロ梅田駅構内)
「痴漢」の語釈を見てみよう。「女性にみだらないたずらをしかける男」(『デジタル大辞泉』小学館発行)とある。その記述の後に「痴漢行為」の略でも最近使われると。「痴漢 is 犯罪」となり、やはり文意がおかしい。インパクトがある表現だ。痴漢行為は性犯罪と認識するが、「痴漢行為は犯罪です」と正確に略さずに言ってもらいたい。
大阪メトロの車内アナウンスだったが、ついでにJR西日本の大阪駅改札口にいた駅員に聴いてみた。そうすると、JR西日本ではそんなアナウンスはしていませんと答えが返ってきた。そうなんだ。
↑カエル(ルクア・イーレ9階で)
↑同上
↑同上
↑同上(YOGIBOの許可を得ています)
鉄道に詳しい友人からの情報によると、大阪メトロ御堂筋線の痴漢行為発生件数は日本一だそうだ。
警察庁のまとめでは2022(令和4)年の全国の痴漢検挙件数2233件のうち、電車内は42.1%で圧倒的に多い。痴漢行為は、加害者の性的な問題や支配欲、達成感、優越感から来ていると思われる。(小川たまか「痴漢は犯罪」ポスターが生まれるまで〜大阪「性暴力を許さない女の会」の28年〜2024年6月2日閲覧)。また混雑率との関連が大きいと思われる。女性専用車の運行へとつながってくる。
↑阪急百貨店前コンコース(記事と一切関係がありません)
↑同上
↑同上
↑同上
↑同上
大阪メトロのHPを閲覧した。「大阪府警察鉄道警察隊と合同して、痴漢行為撲滅に向けた啓発活動」を2023年度は5回実施した。
①4月24日(月)〜4月28日(金)
②7月3日(月)〜7月9日(日)
③9月4日(月)〜9月13日(水)
④12月1日(金)〜12月10日(日)
⑤1月10日(水)〜1月14日(日)
啓発活動の内容は、啓発用ポケットティッシュの配布(梅田駅、なんば駅、天王寺駅の改札内外で朝と夕方のラッシュ時)、駅構内特別巡視(07時〜09時、17時以降)、車内の啓発放送(肉声)、駅構内の自動放送、ポスター掲出、駅構内のサービス情報表示器による啓発表示、駅構内の旅客案内表示器による啓発表示、車内案内表示器での啓発表示(御堂筋線のみ)などである。
「クローズアップ現代」(2020年1月23日)のデータによれば、痴漢行為が多く発生する時間帯はラッシュ時と重なる。07時〜08時、17時〜18時が多い。曜日別に見れば、月曜日(150件)、火曜日(80件)、水曜日(90件)、木曜日(110件)、金曜日(90件)、土曜日(70件)、日曜日(50件)となっている。平日に集中しているが、土日でも起きている。痴漢行為(691件)が起きた場所は、車内が66%、駅構内が22%だった。ただし曜日別発生件数は目視であることを付記する。
鉄道会社や鉄道警察隊の取り組みが痴漢行為を防止する大きな働きをしている。そのきっかけになったのが「地下鉄御堂筋線事件」である。1988年11月4日21時過ぎ、大阪市交通局地下鉄御堂筋線車内で二人の男の痴漢行為を注意した女性が逆恨みされ、堺市内でレイプを受けた事件である。
懲役4年の求刑に対して、判決は情状酌量されて懲役3年6月の判決が下った。「前途ある青年」の犯行ゆえに情状酌量された。この判決には被害者の視点が抜け落ちていると思われる。
↑かつては「ゆびつめに注意」だった
痴漢行為をする加害者の特徴はスーツ姿の男性が浮かぶが、どうもそうでもないらしい。駅員に聞くと、現場の職員のしんどさも理解したい。私も入り口の扉付近には立たない。両手で吊り革を握る。痴漢とまちがえられて、冤罪になった男性もいて、映画にもなった。「クローズアップ現代」でも加害者に対する対応を訴えている。1次予防としては啓発活動の大切さだ。2次予防は、早期発見・早期治療。3次予防は、再犯防止のための専門治療が重要になる。こういう取り組みが相まって「見て見ぬふりをしない」痴漢なき社会を実現したい。