判検交流について

 今は東海地方の裁判所に務める裁判官(刑事部)がいる。40代の裁判官だ。その裁判官とは面識や交流はない。連絡先も知らない。

f:id:higachanntan:20240910051558j:image点字ブロックを黒いテープで囲むと見やすい(本文と関係ありません)@大阪駅

 彼の出生地は大阪府、そして福井県越前市で育つ。昭和50(1975)年の早生まれだ。49歳。福井県進学校から東京大学法学部に進学。司法試験に合格して、司法研修所で検事に任官しないかと上司から声がかかる。声が掛からないと弁護士の道しかない。そこから彼の栄光ある法曹の道が始まった。

 平成10(1998)年4月に検事に任官する(推定)

 平成13(2001)年10月から神戸地裁判事補

 平成16(2004)年4月、札幌家地裁判事補

 平成18(2006)年4月、札幌簡裁判事・東京地裁判事補

 平成19(2007)年3月、東京簡裁判事・東京地裁判事補

 平成19(2007)年4月〜検事(国交省鉄道局)

   平成21(2009)年4月、名古屋地裁判事補・名古屋簡裁判事

 平成23(2011)年10月、名古屋地裁判事・名古屋簡裁判事

 平成24(2012)年4月、東京地裁判事・東京簡裁判事

 平成27(2015)年4月、仙台高裁秋田支部判事・秋田簡裁判事

 平成30(2018)年4月、千葉地家裁判事・千葉簡裁判事

 令和4(2022)年4月、名古屋高裁判事・名古屋簡裁判事

f:id:higachanntan:20240910051951j:image↑『お船がきた日』(本文と関係ありません)

 検事を務めて、裁判官から検事を2年間務めている。いわゆる「訟務検事」をしていた。行政訴訟や国家賠償訴訟で国を代表して、私人の訴えを排斥する立場をとる。そして、裁判所に戻り、裁判官として国の主張を審理して、判決を下す。それを「判検交流」(判事と検事の人事交流)という。

f:id:higachanntan:20240915003310j:image前進座特別公演「花こぶし-親鸞聖人と恵信尼さま-」@国立文楽劇場(2024年9月14日)
f:id:higachanntan:20240915003313j:image↑フォトタイムで撮影
f:id:higachanntan:20240915003317j:image↑アンコール
f:id:higachanntan:20240915003321j:image↑右から法然上人(藤川矢之輔)、恵信尼(浜名実貴)、親鸞聖人(嵐芳三郎)

【千葉県弁護士会長の声明】

1998/12/16

寺西判事補に対する分限裁判最高裁決定について会長声明
 平成10年12月1日、最高裁判所大法廷は、仙台地方裁判所の寺西和史裁判官(判事補)に対する分限裁判における抗告事件で、仙台高裁の戒告処分決定に対する同裁判官の抗告を棄却し、同裁判官の戒告処分を確定させた。 当会は、これまで2回にわたり会長声明を発表し、「憲法の保障する表現の自由は、政治的意見(活動)の形成を促すものとして大切な人権のひとつであって、裁判官の市民感覚を養うためにも、裁判官といえども一市民として表現の自由を保障されているとしたうえ、本件事案は裁判所法にいう「積極的政治活動」にあたらないから、同裁判官を懲戒に付すべきではない」としてその旨の決定を求めてきたが、今般の決定はこれに反するものであり、誠に遺憾である。本件決定の多数意見は、「本件集会は、単なる討論集会ではない」こと、組織的犯罪対策法を廃案に追い込むという「党派的な運動の一環」であること、集会の趣旨に賛同する言動は「国会に対し立法行為を断念するよう圧力をかける行為」であるとして、「単なる個人の意見の表明の域を越える」ものであるなどと断定した評価を加えた上、「裁判官は、外見上も中立・公正を害さないように自立・自制すべき」であるとする「公正らしさ」論を根拠としている。多数意見はこの「裁判官の公正らしさ」の根拠として、裁判官が国民の自由と権利を守ることを任務としているからであるとする。

 そして、多数意見は、同裁判官が出席した盗聴法と令状主義に関するシンポジウムという集会における言動が、「本件集会の目的である本件法案を廃案に追い込む運動を積極的に支援し、これを推進するものであり、裁判所法52条1号が禁止している積極的政治運動に該当する」というものである。

 しかし、同裁判官の同集会における発言要旨は、「パネリストとしての発言は辞退する」「仮に自分が法案に反対の立場で発言しても、裁判所法に定める積極的に政治活動に当たるとは考えていない」というものにすぎず、これを、「積極的政治運動」に該当するとは到底、言うことができない。 この程度の言動まで、「積極的政治運動」に該当するとすれば、結局裁判所法52条1号は、裁判官の政治活動のすべてを禁止することになりかねず、違憲のそしりを免れない。

 さらに、本件の場合、事案の性質に鑑み、審問手続は公開とすべきであったのに、これを非公開とした等、適正手続原則に反する疑いが濃いといわなければならない。 以上のように、最高裁の本件決定には、きわめて多くの問題点がある。しかしながら、同決定には、5名の弁護士・学者出身の裁判官の反対意見が付されており、これは、多数意見の理由の説得力のないこととあわせ、その不当性を示すものであって高く評価できる。

 そのうち、河合伸一裁判官は、「裁判官の中に必要以上に言動を自制するものが現れはしないかと案ずるのである」とし、遠藤光男裁判官は、「裁判官は、裁判所外の事象にも常に積極的に関心を絶やさず、広い視野を持ってこれを理解し、高い識見を備えるよう努めなければならないのであって、そのためにも、でき得るかぎり自由闊達な雰囲気の中でその職務に従事することが望まれるのである」として戒告処分の取消を主張しているほか、他の3名の裁判官の反対意見も説得力に富むものであり、いずれも市民の良識に合致する意見である。

 当会は、最高裁の本決定に対し、強く遺憾の意を表するとともに、裁判官の市民的自由の確立と裁判官に対する不当な統制のない司法の実現、そして、より根本的には法曹一元制度の実現に向けて一層の努力をするものである。

1998年(平成10年)12月16日

千葉県弁護士会 会長 本木 睦夫
f:id:higachanntan:20240910051752j:image ↑点字ブロック(本文と関係がありません)

 彼の経歴を見ていて、華やかな出世の道を歩んでいるのはご同慶の至りではある。しかし、最高裁大法廷1998(平成10)年12月判決(上記の千葉県弁護士会の会長声明を参考にされたし)と矛盾するのではと思っている。彼だけでなく、他の裁判官には良心と経歴との間の乖離がないのだろうか。

 

【参考文献】

「行政と司法の癒着『判検交流』」(しんぶん赤旗2024年5月7日付、阿部泰隆)