北区老松町

 北区老松町の大阪現代画廊で開かれている「木版画セッション3」を鑑賞した。井川泰雄、斎藤義弘、中谷省三の三作家の作品が陳列されている。井川さんは高校の先輩で、初任校で一年間同僚として勤務した。郷土の風景を木版画で表現されている。展覧会は10月21日まで開かれている。

f:id:higachanntan:20231019210955j:image↑三人展のハガキ

 老松通を西に向かって歩く。かつてあった骨董品を扱う店が減っている。時の流れを感じる。老松町の名前の由来が気になり出した。『角川日本地名大辞典 大阪府』に当たる。『摂陽群談』には、「(当町民家にある老松は)住吉太神影向の松にて往昔樹下に祠ありてよつて住吉町と号す」と。元は住吉町だった。

f:id:higachanntan:20231018200121j:image↑老松通の道標
f:id:higachanntan:20231018200115j:image↑同上(歩道に銀杏が落ちている)
f:id:higachanntan:20231018200134j:image↑同上

 

 老松通を抜けると、アメリカ合衆国総領事館が見えてくる。前に機動隊の車両が停まっている。そして、機動隊員が建物の周りを警護している。

 建物にスマホを向けようとすると、機動隊員が近づいてくる。「撮影をしないでください」と撮影をやさしく静止する。私も平静に「なんで?」と訊く。「法律に書いてあるから?」に「お願いです」と機動隊員。撮影できそうにないなと判断したので、メモ帳に筆記した。

f:id:higachanntan:20231018201328j:imageアメリカ合衆国総領事館

 

 総領事館の玄関左横に銘板がある。撮影できないので、手帳に書いたことを再現する。

 銘板には上部に英文で設計者と施工者が書かれている。下部には日本語で同様のことが書かれている。

 

 アメリカ合衆国総領事館

 設計  大倉建築設計事務所

 施工  戸田建設株式会社

 開館  1987年2月16日

 

 玄関を北東に曲がった場所に灯籠がある。ライオンズクラブの寄贈とある。首を伸ばすと、「中に入れませんよ」と機動隊員が行動を静止する。

 その機動隊員に「庵治石の灯籠を撮影していい?」と訊く。自己判断できないので、何メートルか先の同僚に判断を求めた。その隊員が「撮せませんよ」と答える。先の隊員が頷く。わかったと私も首を縦に振る。

 先の機動隊員に「庵治石って知ってる?」

「いいえ」

香川県の石の産地だよ」

「へーえ、詳しいですね」

「そら〜、亀の甲より年の功やで」

「勉強になりました」

「ついでに教えてあげる。日本共産党本部も戸田建設が建てたんだよ」

「そうなんですか!」

「寒くなるから、身体に気をつけてね」と、ヒガチャンは飄然と梅田に向かって歩き出した。

  

【参考文献】

角川日本地名大辞典 大阪府』(角川書店、昭和58年10月)