東西一流の浪曲師と曲師(三味線の師匠)が顔を揃えた大会が昨日、開催された。国立文楽劇場大ホールで開かれた。かつては道頓堀朝日座で開催されたのを覚えている。すでに道頓堀の斜陽が言われていたが、浪曲界のオールスターを揃えての興行が打てたのだ。主催者(さゆり企画社、天光軒新月の会、新月後援会、大阪新創芸会)の意気込みを買いたい。浪曲師のスケジュールの調整もたいへんな苦労があっただろう。
↑豪華東西浪曲大会の演者
「天光軒新月五説経披露記念」と銘打った浪曲大会だから、天光軒新月師の顔の広さと人格の賜物とも言えよう。
↑豪華東西浪曲大会のチラシ
↑同上
大会で口演した浪曲師と相三味線(曲師)、演し物を紹介しよう。
①天中軒かおり、広沢御舟、「琴桜」、天中軒雲月門下の新人初デビュー。緊張しただろうが、うまく初デビューを飾った。今後の活躍を祈る。
②真山隼人、沢村さくら、「刃傷松の廊下」(飯山栄浄作)、息のあったコンビの熱演。故真山一郎師を彷彿とさせる熱演。テーブル掛けは真山誠太郎師の遺品(元は先代真山一郎師のテーブル掛け)。京山幸太と浪曲界の未来を背負っている。
↑テーブル掛け
↑2024年9月28日にあった「真山隼人の浪曲研究会」@高津社
↑同上(ご両人のご了解を得ている)
③菊池まどか、藤初雪、「暖かい手」、万引き少年が19年後に優しくしてくれた女性に恩返しをする。人情の機微を描き、「困った時はお互い様」でホロっとさせる。故・京山小円嬢師の薫陶を受けた、一児の母。
④京山幸乃、一風亭初月、「祐天吉松喧嘩坊主」、活発な幸乃さんに似合った演し物だった。人間国宝・京山幸枝若門下。
⑤三原麻衣、藤初雪、「はばたけ千羽鶴」、原爆病で亡くなった佐々木禎子の人生を語る平和浪曲。三原佐知子師の弟子。河内長野市在住。
⑥天中軒すみれ、広沢御舟、「山内一豊の妻」、天中軒雲月門下の実力派。
⑦京山幸太、一風亭初月、「天光軒新月物語」、人間国宝・京山幸枝若門下。兵庫県加古川市出身。ボディビルもする。引き締まった体も持ち主。ロックも好き。浪曲界の未来を背負っている。「京山幸太物語」も発表。物語シリーズを期待する。
⑧春野恵子、一風亭初月、「お菊と播磨〜番町皿屋敷より〜」、悲恋物語。故・春野百合子師の文芸物。百合子門下で活躍。百合子師のテーブル掛けを継いだのか。
⑨松浦四郎若、虹友美、「勧進帳」、元浪曲親友協会長。東京で口演し、「浪曲界の良心」と評価された。いぶし銀の口演で人気が高い。愛媛県西宇和郡伊方町出身。
⑩天中軒雲月、広沢御舟、「巌流島の決闘」、日本浪曲協会長に4月に就任。大阪と東京の往復で忙しく活躍をしている。
↑天中軒雲月師(撮影許可を頂いている)
【大取(大トリ)】天光軒新月、虹友美、「小栗判官と照手姫」、京山幸太さんの「天光軒新月物語」に詳しい。
【参考文献】